練馬区に「子どもの権利条例」を

子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)は、
世界中すべての子どもたちがもつ人権(権利)を定めた条約で1989年に国連総会において採択されました。この条約を守ることを約束している「締約国・地域」の数は196。世界で最も広く受け入れられている人権条約です。

<子どもの権利条約の4つの原則>

◯生命、および発達に対する権利→戦争や暴力・差別・貧困・疾病などから保護され、健全に発達していく権利。

◯子どもの最善の利益→子どもがかかわるすべての活動において、子どもの最善の利益を保障すること。

◯子どもの意見の尊重→子どもの声を聞く、聞かれる権利。意見が尊重され、表明する権利。

◯差別の禁止→どの子どもにも、人種・皮膚の色・性・言語・宗教・政治的意見・財産・障害・出生または国民的・民族的もしくは社会的出身、そのほかの地位にかかわらず、差別なく、保障される権利。(ユニセフのHPより)

 

批准した国はその権利が実現するよう尽力しなければなりませんが、日本は1994年に批准したのち、複数の項目において、何度も勧告を受けています。

批准から28年、2023年にやっと「こども基本法」が施行され、2021年には東京都においても「こども基本条例」が施行されています。しかし、実際に直接子ども施策に関わるのは自治体である場合が多く、実行する自治体に子どもの権利条例があるということは重要なことです。今回の一般質問ではあらためて練馬区に「子どもの権利条例」の制定を求めました。

 

<練馬区にも「子どもの権利条例」の制定を!>

8月に「子どもの権利に関する条例」が施行されて12年が経つ大阪府泉南市を視察し、今回の一般質問に取り入れました。

・子ども・若者白書には「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる者ほど自分自身に満足している者の割合が高い」とあります。日本の子ども・若者の「自分自身に満足している」自己肯定感は先進国の中でも20ポイント近く差がある最下位。日常的に子どもが「自分の意見を受け止められている」と感じられるよう、子ども同士、子どもと大人、子どもと先生、子どもと行政などの対話の場をもっと増やしていくべきです。

・全国では「子どもの権利」を内容までよく知っている教員の割合は約5人に一人。全く知らない、名前だけ知っていると答えた教員は30%(セーブ・ザ・チルドレンの2022年の調査)です。教育の現場において、子どもの権利の視点がまだまだ浸透していないのではと懸念します。

・泉南市では「子ども会議」を実施しています。市の「泉南市子どもの権利に関する条例」で定められた、月に一度、市内の子どもならだれでも参加できる会議です。これは子どもの意見表明と参加をすすめる「まちの仕組み」の一つとしてつくられています。

・泉南市には子どもの権利条例を教育課程に位置付け、子どもの権利を基盤とした公立小学校での取り組みがあります。毎年11月20日を「せんなん子どもの権利の日」と制定。その日に向け、子どもに関わる大人は「子どもの権利」を子どもに伝えるために準備し、子どもも自分たちの権利を知る機会になっています。練馬区でも「仕組み」として、教育現場に取り込んだり、定期的な子ども会議で子どもの声を区政に取り込んだり、子どもの権利の日の制定をし、学ぶ機会を作ったりすることが必要です。

・泉南市ではこの条例をつくる段階から、市民が深く関わっており、条例ができた後も検証と公表のシステム(条例委員会・市民モニター制度)が機能しています。

そんな泉南市で、制定から10年目の2022年に子どもの自死があり、関係者は大きな衝撃を受けたと聞きました。市の対応に市民条例委員は「条例が形骸化している」と、市長に指摘。その後、市民条例委員は「子どもに関わる課題が見えてきたのも、正面から向き合おうとする市民の声が表に出るのも、泉南市には条例があるから。これまでに条例に基づいて事業を実施したり、検証したりする、しくみを作ってきた結果であり、子どもたちの直面する課題を、市民と行政が乗り越える『道』は、子どもの権利の中にある」と述べています。

これまで練馬区は「子どもの権利条約の理念を取り入れた、子ども・子育て支援事業計画に基づき、権利擁護を図る。条例を制定する考えはない」と主張していますが、子どもの施策はひとつの部署、一つひとつの計画で完結するものではありません。どこの部署でもいつの時代でも、職員や区長が変わっても、子どもの権利は普遍的であるべきではないでしょうか。練馬区にも「子どもの権利条例」を!もちろん子どもたちを含めた区民みんなで作り上げていけるよう、これからも活動していきたいと思います。

子どもの権利条例を学校と市政に取り入れている大阪府泉南市を視察